声がした方向に目を向けると、ぼんやりと人間の影。
なるほど、今まで眼前が真っ白だったためそもそも視野が無い、という可能性が高かったがそんなことはなく、一応認識はできるようだ。
それでも自身の肉体が視認できないのは、私は意識のみでこちらに漂っているという証拠にもなりつつある。
そして、意識のみ漂流するであろう空間に肉体を形どった者が現れるのは些か矛盾を感じる。
と、いうことはだ。やはりここは死後の世界で、彼女は自身より高位の立場、ひいてはこの場を管理する者であるという事なんだろう。
「ご明察です。私は神々の中の一柱、という身分になるでしょうか。」
なるほど。この場で奇しくもイエスやムハンマドの弟子は、己が偽りを伝播したことが判明してしまった。
正解は、多神教だったか。
「そうですね。下界の人々が物、現象、言い伝えに対してそれに関する神が存在するであろうと信仰し始めた段階で、その神が熾ります。」
ということは、基本的には多神教の信者が神様を創り出しているという訳か。
「並びに信仰している人数によってその神の力、とでも言いましょうか。それが上下します。風化して信者が居なくなった神は消えてしまう、といった寸法ですね。」
その道理だとジ・ゴッド、アッラー、ヤハウェ等一神教の神々はとんでもない力を得ていそうではあるな。
「まあ、私が万単位で逆立ちしても敵いませんね。」
なるほどなあ。それで、貴殿は輪廻転生の神様で御座しましょうか。
「いえ、そんな大層な者ではありませんね。私の熾りは、日本のサブカルチャーです。とあるウェブ小説サイトを起源とし、少数でも確実に、私の信者は存在します。」
一瞬の混乱。まさか違うとは。それでは、一体なんだというのか。
「私は、異世界転生の神です。」
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